Le Petit Prince(星の王子さま)サン=テグジュペリ
1943年にアメリカで出版された。不屈の名作だと言われており、200以上の国と地域の言葉に翻訳されている。日本初版は1962年に岩波書店から出版された「内藤濯訳」のもの。2005年1月に翻訳出版権が消失されたため、その後多くの新訳が出版されている。
内藤 濯『愛蔵版 星の王子さま』 岩波書店・2000.11出版・142p・1600円・縦書き・ですます調。 初版は1962年11月。タイトル『Le Petit Prince』を『星の王子さま』と訳した。印象訳。 三野 博司『星の王子さま 』 論創社・2005.6出版・142p・1000円・ぱらルビ。 訳者あとがきには翻訳に際して留意した点だけが記してある。とてもわかりやすい訳。 倉橋 由美子 『星の王子さま-新訳-』 宝島社・2005.7出版・158p・1500円 訳者は原文を大人が読むための小説として読み、そのつもりで訳しているとのこと。 山崎 庸一郎『小さな王子さま』 みすず書房・2005.8出版・119p・2000円 註があり、ストーリーの背景が良くわかる。 池澤 夏樹『星の王子さま 新訳』♥ 集英社・2005.8出版・125p・1200円・横書き。 詩的。センテンスが短く、ストレートに言葉が響く。とても好き。 川上 勉・廿樂 美登利『プチ・プランス-新訳星の王子さま-』 グラフ社・2005.10出版・199p・1500円・横書き・ぱらルビ。 「子ども向けの話のように見えながら大人向けの作品であり、『星の王子さま』という日本語が持つ童話風なイメージを白紙に戻して読んでほしい」という思いから表記を「プチ・フランス」とし、訳文にも留意したという。(文中に『プチ・フランス』が何回も出てきて私的には読みづらかった)原文付。 石井 洋二郎『星の王子さま』 筑摩書房・2005.12出版・163p・580円 ・ 横書き・ですます調。 「子どもの読者だけを想定して書かれた作品とはおよそ思われないので『王子さま』という敬称を文中では『王子』にし、「子供たちに直接語りかけるような原文の調子を生かすという趣旨から『ですます調』を採用。できるだけ平易な日本語で訳すことを基本方針とする一方、大人の読者の鑑賞にも十分耐えられるような訳文にすること」を心がけたそうだ。また、挿絵が作者自身によって描かれているので、単なる添え物ではなく、文章と一体をなして一つの『作品』とみなすべきものと考え、原書の意図を尊重する立場から挿絵との関係がスムーズにいくように本文を横組みにしたそうだ。 ☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~ 原作者は子どもの頃から絵を描くのが好きで、大人になってもレストランなどで雑談中にメニューやナプキンにふと何の気なしに一人の少年を描いていたそうだ。ニューヨークの出版社の取締役カーティスが「あなたの絵に現れる少年を主人公にして少年の話を子ども向けの本にしてみては?」と提案し、出来上がったのが「星の王子さま」で、執筆と挿絵の制作を同時並行的に行ったそうだ。 「星の王子さま」という本は『挿絵とストーリーは切り離せない』と私も思っている。 辛酸 なめ子『「新」訳 星の王子さま』 集英社・2005.12出版・127p・1500円 他の人がフランス語から下訳したものをもとにパロディ化したもの。イラストは辛酸なめ子本人。 河野 万里子『星の王子さま』♥ 新潮社・2006.4出版・158p・476円・ぱらルビ。 誠実に訳されていて読みやすい。文庫なので持ち歩きに便利。 谷川 かおる『星の王子さま』♥ ポプラ社・2006.7出版・164p・570円 ・縦書き・縦書き・ぱらルビ。 児童書なので子どもを対象に丁寧に訳されている。訳者の解説で原作者の生涯も紹介されている。 浅岡 夢二『星の王子さま』 ゴマブックス・2008.11出版・99p・1680円・ 横書き・ですます調・ぱらルビ。 イラストは葉祥明。 スピリチュアルの観点から訳されている。 (⑥「ぼくは、少しずつ、君のメランコリックな人生のことを理解していったのでした。」㉑「ものごとはハートでみなくちゃいけない」はしっくりこない。) 管 啓次郎『星の王子さま』 角川書店・ 2011.6出版・172p・ 620円・総ルビ。 王子さまに対する私のイメージと違った斬新な訳が私には合わなかった。イラストは西原理恵子。訳には合っていた。 内藤 あいさ『星の王子さま』 文芸社・2013.9出版・137p・ 600円・横書き・ですます調。 内藤濯氏の訳を参考にしたのか、とても似ている。加藤晴久氏(*その他を参照)の言う誤訳が多い。 ドリアン 助川『星の王子さま』 皓星社・2016.12出版・172p・1600円・縦書き。ぱらルビ。 第4の星の実業家が関西弁だったり、訳に違和感あり。訳者あとがきのほうが心に届いた。 芹生 一『星の王子さま-新訳-』 阿部出版・2018.4出版・202p・1400円 飛行士と王子さまを対等に扱った訳。リズム感があり、読みやすい。 訳注とあとがきから、原作者の執筆当時の社会背景や心境等がわかり、より理解が深まった。 (3本のバオバブ=ドイツのヒトラー政権、イタリアのムッソリーイ政権、スペインのフランコ政権?日独伊三国同盟?)(バラ=妻のコンスエロ?22歳の時に婚約したルイーズ?母親?) |
その他
山崎 庸一郎 監修・文『星の王子さまのはるかな旅』 求竜堂・1995.2出版・117p・2816円 「星の王子さま」の世界を旅する美しいヴィジュアル・ブック。原作者の詳しい年譜や、子ども時代、パイロット時代等が書かれている。池澤夏樹の寄稿文もあり、とても充実している1冊。 三田 誠広『星の王子さまの恋愛論 』 日本経済新聞社・2000.11出版・218p・1200円 恋愛論のみではなく、原作者の生涯や他作品の解説などが書かれている。 加藤 晴久『憂い顔の「星の王子さま」-続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ- 』 書肆心水・2007.5出版・255p・2200円 内藤濯訳と新訳14点が正しく翻訳されているか具体的に検証。いい加減な訳に怒る著者。とても辛口だが読み応えがある。作家のクンデラの言葉を引用して「うつくしい翻訳とは忠実な翻訳のことなのである」と述べている。 稲垣直樹『「星の王子さま」物語』 平凡社・2011.5出版・266p・840円 原作者についての研究を参照にして伝記的事実を丁寧に洗い直し、新たな解釈を提示。原作者の人生と作品が見事な偶然の連鎖と折り重なりを見せているのがよくわかる。 著者は「『星の王子さま』を読むことは感性と思考のトレーニングである」と言う。 |
絵本
工藤直子訳『絵本で出会う星の王子さま』 ひさかたチャイル・2015.11出版・24p・1200円 出版社 東京 ひさかたチャイルド 出版年月 2015.11 価格 1200円 訳者は大好きだが、ストーリーはほとんどカットされているし、伝わってこない部分が多く残念。小さい子どもが楽しめるようにアレンジし、オリジナル版への橋渡しとしての絵本とのこと。 |
ストーリー(内藤濯訳)
1.ぼく(飛行士)の子ども時代の「ウワバミの絵」のはなし。☆大人と子供を判別するもの。 2.ぼくの飛行機がサハラ砂漠でパンク。一人ぼっちで眠りにつき、夜が明けて目をさますと、「ヒツジの絵をかいて!」と言う声が…。王子さまに出会う。 3.王子さまはどこから来たの? 4.王子さまの星は、小惑星B-612番だと思う。番号なんてどうでもよいけれど、大人は番号が好きなので。 5.3日め。王子さまから「バオバブの木」のはなしを聞く。 6,4日め。王子さまから1日に44度も入り日を眺めたはなしを聞く。 7.5日め。王子様の秘密がわかる。 「だれかが、何百ものどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。」 8.王子さまの星の美しい花のはなし。 9・王子さまが星を旅立った日のはなし。 10.王子さま、他の星の見物。第1の星。ワンマンの王さま。 11.第2の星。うぬぼれ男。 12.第3の星。呑み助。 13.第4の星。実業家。 14.第5の星。点燈夫。王子さまは初めて友だちにすればよかったと思った。それは、点燈夫が自分のことではなく他のことを考えているから。 15.第6の星。地理学者。王子さまは「はかない」という言葉を知って、故郷の星に残してきたバラを思い出して胸が痛む。 「はかないってなんのこと?」 「そりゃ、<そのうち消えてなくなる>っていう意味だよ」 16.第7の星。地球。 17.王子さま、砂漠でヘビに出会う。 18.王子さま、砂漠の花に出会うが、なんでもない花だった。 19.王子さま、高い山にのぼるが、とがった岩のほかになんにも見えない。自分の星の花を思い出す。 20.王子さま、長いこと歩いていると、5千ほどのバラの花が咲きそろっている庭に着く。自分の星の花を思い出す。 21.王子さま、キツネと友だちになる。自分の星の一輪のバラの花が世の中に一つしかない大切な花だということに気づく。 キツネから秘密を教えてもらう。「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」★キツネの教訓 22.王子さま、旅客を千人ずつ荷物にしてえりわけているスイッチ・マンに出会う。大人は眠っているかあくびをしているけれど、子どもは窓の外を見たり人形と遊んでいる。王さまが「子どもたちだけが、なにがほしいかわかっているんだね」と言う。★大人と子どもの違いを明確に分析。 23.王子さま、1種間に53分時間が倹約になる丸薬を売っているあきんどに出会う。王子さまは「ぼくがもし、53分って時間、好きに使えるんだったらどこかの泉のほうへ、ゆっくり歩いてゆくんだがなあ」と思う。 24.ぼく(飛行士)の飛行機が砂漠の中で故障して8日め。飲み水が1滴もなくなる。ぼくと王子さまは井戸を探しに砂漠の中を歩き始める。「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ…」と王子さま。「家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないのさ」とぼくが言う。 25.井戸を発見する。ぼくは王子さまに水を飲ませてあげる。 「きみの住んでるところの人たちったら、おなじ1つの庭で、バラの花を5千も作ってるけど、じぶんたちがなにがほしいのか。わからずにいるんだ」「探してるものは、たった1つのバラの花のなかにだって、少しの水にだって、あるんだがなあ…」「だけど、目では、なにも見えないよ。心でさがさないとね」と王子さまが言う。 明日は王子さまが地球に降りてきてから1年めの記念日。 26.ぼくは、井戸のそばの古い石垣の上に腰をおろしている王子さまが、その下にいる黄色いヘビと話をしているのを見る。 今夜は王子さまの星が、降りてきた所のちょうど真上にくる。王子さまは星に帰って行った。 「夜になったら、星をながめておくれよ。ぼくんちは、とってもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、きみに見せるわけにはいかないんだ。だけど、そのほうがいいよ。きみは、ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだと思ってながめるからね。すると、君は、他の星も、ながめるのが好きになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ」 「ぼくは、あの星の中の一つに住むんだ。その一つの星の中で笑うんだ。だから、きみが夜、空をながめなたら、星がみんな笑っている」 |
星の王子さまミュージアム(2023年3月31日閉館)